吸血鬼は淫らな舞台を見る   episode ι (エピソード・イオタ)



「無闇に力を使わないほうがいい。体にどんな影響が出るのかわからないんだから」


「副作用みたいなものが出るとは書いてないけど」


イオタは頭の中の赤い本を速読する勢いで漁ってみたが、舞台で力を使った後のことはなにも書いてなかった。


「ぼくの血をもっと飲めば答えが出るかもしれない」


シータが自虐的なことを言う。


「へぇ~血を飲む量が増えれば知識が増えたり、もっと古い過去がわかったりする可能性があるということかな」


口調こそ関心を装っている感じだったが、想定内のことだったのかイオタの表情にさほどの驚きはない。