吸血鬼は淫らな舞台を見る   episode ι (エピソード・イオタ)



「君はわざと自分が虐げられている舞台をぼくに見せたんだね。ぼくを同情させて、危険な行動に走るように仕向けた」


イオタは舞台中央からゆっくり歩いてシータに近づく。


「ぼくの記憶の一部を見せただけだよ」


「わざわざあんな舞台を見せる必要はなかったと思うけどな」


イオタは舞台の縁に座り、ぶら~んと両足を垂れ下げた。イオタとシータの距離は五メートルもない。


「ここから逃げる方法を考えた結果だよ」


「自分だけが……でしょ?」


イオタが蔑んだ視線を向ける。