イオタは自分が自分でわからなくなってきた。 いま自分が何歳なのかも正確にわからず、自分の名前が本当にイオタなのかも疑わしい。 あの女はシータ君と言っていたから、シータがシータであることは間違いなく、名前は偽ってなかったようだ。 自分はお調子者という馬鹿にされた仮の名前で呼ばれたのに……と、イオタに嫉妬に近い感情が燻る。 黒い霧に重量が感じられ、徐々に胸の辺りが苦しくなってくる。 イオタは黒い霧の正体が精神的なストレスの類だと判断し、解き放つため、心の蓋を開けた。