怒りが緩衝材の役割を果たしてくれたのか、単に時間の経過が痛みを緩和してくれたのか正確なことはわからないが、イオタは頭痛と耳鳴りから開放されつつあった。
耳鳴りは治まり、ハンマーで殴られているのかと思った頭痛は、丸めた新聞紙で叩かれるくらいまで急激に落ち着いた。
このときイオタは怒りがエネルギーになることを知る。
体力や思考力が正常に働くうちに逃げなければいけない。
でも、どうやって?
頭の中に赤い本を浮かび上がらせ、手足を拘束された状態で脱出できる方法を探ったが、答えになるようなことは書いてなかった。



