吸血鬼は淫らな舞台を見る   episode ι (エピソード・イオタ)



二本目、三本目、と採血されているとき、イオタは目に薄っすらと涙を滲ませた。


「あら泣いてるの?」


女は少しびっくりしたような表情をしてまた笑った。


「でも、シータ君を許してあげてね。もう血を採らない代わりに隠し事はしないでねって、せっかく約束させたんだから」


女は四本目の注射器のシリンダーから空気を抜く。


「思っているほど辛くないでしょう」


四本目を刺され、血を採られている最中、イオタはシータに裏切られたことなど忘れてしまうくらい、体の異変に苦しめられた。


何か硬いモノで殴られたような頭痛と、キィーンという高い周波数の耳鳴りが断続的に襲ってきたのだ。