二本目、三本目、と採血されているとき、イオタは目に薄っすらと涙を滲ませた。
「あら泣いてるの?」
女は少しびっくりしたような表情をしてまた笑った。
「でも、シータ君を許してあげてね。もう血を採らない代わりに隠し事はしないでねって、せっかく約束させたんだから」
女は四本目の注射器のシリンダーから空気を抜く。
「思っているほど辛くないでしょう」
四本目を刺され、血を採られている最中、イオタはシータに裏切られたことなど忘れてしまうくらい、体の異変に苦しめられた。
何か硬いモノで殴られたような頭痛と、キィーンという高い周波数の耳鳴りが断続的に襲ってきたのだ。



