吸血鬼は淫らな舞台を見る   episode ι (エピソード・イオタ)



図書館のような部屋と肖像画のある部屋を合わせたくらいの広いスペースに六、七人は座れる白いテーブルクロスのかかった丸いテーブルが不規則に配され、階段手前には植え込みと控えめな音をさせながら流れる小川がライトアップされていた。


結婚式場、しゃれたレストランといった雰囲気が二階のスペースに確保されていた。


女は奥の窓際の席に座り、背中を向け、手元で何かを操作している。


等間隔に並ぶ丸い大理石の柱に身を隠しながら近づく。


二階の床はバラ模様の刺繍が施してある厚めの絨毯が一面に敷かれ、足がフワッと宙に浮く感覚で足音が吸収される。


座っているところまで柱二本分、距離にして一〇メートルくらいまで近寄ると、女の独り言が聞こえてきた。