吸血鬼は淫らな舞台を見る   episode ι (エピソード・イオタ)



「それは約束できないな」


シータは弱々しい笑顔で手を振る。


「きっと探し出してみせる!」


幕が下りる寸前、狭くなる隙間に合わせ、顔を横にしてイオタが叫ぶ。


シータに声は届いたと思うが、返事はもらえず、表情からもくみ取れなかった。


イオタは幕を掴んで、もう一度舞台の中を覗こうとしたが、床とぴったりくっついてビクともしない。


これもシータの力なのかな?


だとすると、幕が下りたタイミングもシータの思惑で、嫌味を言ってまで遠ざけようとしたのは、それだけ危険だということを教えてくれたことになる。