吸血鬼は淫らな舞台を見る   episode ι (エピソード・イオタ)



「ごめん。怒らせた?」


「怒っていないよ。でも、ぼくの忠告には耳を傾けてほしい」


シータは閉じていた両目を開けると、悲しそうな顔をした。


「わかった」


後ろ髪を引かれる思いでイオタは舞台を下りた。


「また会えるさ」


「シータと現実の世界で会いたい」


イオタは振り向き、切実な願いを込めた。


シータの答えのはぐらかし方は、現実の世界に、しかも屋敷内に居ることを隠したいという心の中が読めた。