吸血鬼は淫らな舞台を見る   episode ι (エピソード・イオタ)



「集中力を発揮してイメージできれば、ここはなんでもありの世界になるのかもしれない。いまのぼくは照明のガラスを割るのが精一杯だけどね」


シータは疲れた顔をさせて体力が限界なことをアピールする。


「ぼくもできるかな?」


自分もできるはずという根拠のない自信が芽生え、イオタが訊く。


「可能だと思う」


シータが希望を与える。


「どうすればいいの?」


「さぁ……それは……イオタ君の努力次第かな」


シータは困ったように頭を掻くと、赤い幕を下げるモーターが動き始めた。