「顔にはっきりと信じられないと書いてるよ」と言ったあと、シータはクスクス笑う。 今回はつくり笑いではなく、本気で笑っているように見えた。 「だって、食事しているときに気を失うと、ここに辿り着くみたいだから夢だと思ってた」 「わかった。ここがぼくの記憶の中だという証拠を見せてあげるよ」 シータは右手の中指を親指で弾き、パチン!と鳴らす。 すると、劇場内奥の壁フックにかかったブラケットランプのガラスがパリンと割れた。 舞台から最後尾の観客席までかなりの距離がある。