吸血鬼は淫らな舞台を見る   episode ι (エピソード・イオタ)



「……平均的だと思うよ」


シータが少し考えてから答えた。


「そうなんだ」


多少気になったが、シータの言ったことをイオタは素直に受け入れた。


「あの女の人には、ここでぼくと会話したことは話してないよね?」


イオタに不快な思いをさせない配慮なのか、シータは慎重な物越しで訊いてくる。


「もちろん。話してないよ」


「ぼくの名前が女の人から出たことはある?」


今度は探るようにシータが尋ねてきた。