吸血鬼は淫らな舞台を見る   episode ι (エピソード・イオタ)



「献血の時間よ」


指の間に挟んだ注射器をかざして女が言う。


「嫌だ……」


シータは大きく首を振る。


「ねぇ、シータ君。そんな駄々を捏ねても私はやめないわよ」


前回の舞台とほぼ同じ演出が進行していく。


あんなにシータが嫌がっているのに……。


「ギャッ」という猫が踏みつけられたような悲鳴のあと、シータの元気は失われ、白かった顔がさらに白く、それを見ているイオタの顔は青ざめた。


女は赤く染まった注射器をポケットに入れると二本目を用意。