勝手に舞台に上がって幕の中を覗いたらシータがいるかもしれない、と邪念が頭を掠めて焦れてきた頃、舞台開始を知らせるブザー音が劇場内に鳴り響いた。
まるで、イオタの気持ちを察しているかのようなタイミングで赤い幕が上がる。
ベッドの足元が見え、イオタは待ち切れず斜め下からシータの姿を確認しようとした。
幕が三分の一くらい上がり、ベッドに寝ているシータを視野に捉えた。
シータ!と叫ぼうとしたが、幕が上がり切らないうちに、あの女がツカツカとハイヒールを響かせて舞台袖から現れた。
イオタは唾を飲み込んで出そうとした声を引っ込める。



