吸血鬼は淫らな舞台を見る   episode ι (エピソード・イオタ)



「昨晩のことは覚えてる?」


女の方から質問してきてくれた。


「うん」


「どこまで?」


尋ねてきた声は穏やかだった。


「ここでこれを飲んで……いつの間にか玄関にいたことは覚えてる」


「以前より記憶はそれほど失ってないみたいね」


女は腕組みをして考え込む。


「これ飲まないと駄目なの?」


イオタは少し勇気を出して訊いてみる。