昔の侍の生き方や潔さに感銘し、感動し、筆者の伝えたいことが脳に浸透してきた。 本の内容はイオタの脳内の赤い本に完璧にコピーされた。 それによってどうしても、有難き幸せ、という言葉を使いたくてしょうがなかった。 「き、気にしないで……」 イオタは顔を真っ赤にして、語尾を濁す。 「侍の魂が乗り移ったのかと思って心配したわ」と、女は一笑に付したあと「あなた本を読むと影響されやすい性質ね」と付け加えた。 女は『血液の不思議』の下にあった『消え去る武士道』という本を一瞥していた。