視力が役に立たない状態で、誰かの声が聞こえた……ような気がした。 ★ ★ ★ 「どこに行く気なの!」 女が呼び止め、腕を掴んでいる。 場所は玄関ホール。 自分がシータと舞台の上で話をしていたのか、それとも肖像画がある部屋で食事をしていたのか、ついさっきまでのイオタの記憶は混同していた。 「夢遊病者のようにまた街を彷徨うつもり?」女は責めるような口調で問いただす。 「ちょっと目を離すとこうなんだから」