「バレーより楽しいものって…?」 思わず聞いていた。 まるで意図的に誘導されたような気分。 片桐くんの知らないところはありすぎる。だから知りたい、一つでも多く彼のこと。 「さあ?」 「へ?」 予想だにしない回答にマヌケな声が出た。 さっきからあたしは醜態を晒しまくりだ。 「名前、なんての?」 「あ、あたし?」 「うん、君しかいないんだけど」 片桐くんの右端の口だけが上がったその表情からは何も読み取れない。