けど、アタシは―― 「暑苦しいわ、ヴォケ! てか、アタシ、ノエルじゃなくて ノエだからぁ」 ゴスッ、とその腹に拳をねじ込んで、 イッーと歯を見せる。 「うっ……、さすが俺の女。 イイ鉄拳……」 「誰がテメーの女だ」 「誰がテメーの女だ」 アタシのツッコミと 低い声が重なった。 掠(かす)れたように 繊細に響いた声。 パッ、とその先を見れば―― 「よぅ、チビ、里緒ちゃん」 ニヤッと微笑み、 タバコを吹かした男が、 運転席から降りてきた。