千賀也や翼に言われて、芳喜は少しだけ顔を上げて笑った。


     ★★


現在2-1で殿崎中が勝っている。残り時間五分。でも太一は、まだ一本もシュートを決めてなかった。

「やばいんじゃないの太一。良いの?鬼本と付き合えなくても。」

「良くないよ翼。ちょっと俺ピンチだよ。」

走ってる翼と太一。

「殿崎頑張れ〜〜。」

「負けるな殿崎ーー!」

声の方向に振り返ると、雷青と薫と一音が居た。

「…っ一音ちゃん…っ!」

叫ぶ翼は、ちゃっかりと転がってきたボールを芳喜に向けて蹴った。ゴール前に居た芳喜は、わざわざ太一にボールを回してきた。ただでさえマークの多い太一は、少し困った。しかもゴールから少し遠かった。

太一は髪を結んでるリボンに願いを込めた。どうかボールがゴールに入ります様に。そのまま思いっ切りボールを蹴り飛ばした。ボールは大きな弧を描いてゴールに吸い込まれていった。審判がホイッスルを吹いた。

「3-1!やった!」