「良いから読めって。ほら、此処に"雷青"って書いてあるだろ。彼女の話を聞いてみると、コレしか無いんだ。な、薫。」

「うん。大体、太一の部屋に雷青が急に現れた時は、当時の飛脚人の服着てたんだもん。腰に短剣刺してたけど。」

太一の相槌を打つ薫を相手にして、千賀也は逃げ場を失った。

「分かった分かった。信じるよ。」

そこで千賀也はハタと気付いた。

「待てよ。それって、雷青をどれだけ好きになっても、雷青には花岡志乃丸が居るから、永遠に恋は実らないって事じゃん。」

「実らないどころか、いつかは雷青は明治時代に戻って、その後二度と会えないかもしれないんだぞ。」

「はあ〜、そんなぁ〜。」

太一の言葉に千賀也はヘナヘナとその場にしゃがみ込んだ。

「千賀也、大丈夫だよ。雷青はいつ戻るわ分かんないんだもん。」

賀の言葉ですら千賀也は励まされなかった。