今彼は何やってんだろ…?

また一人でゲームでもやりこんでるんだろうか。

どうしてあんなものを何時間もやっていられるんだろう。

コントローラを握った彼の顔は試験中よりも真剣だ。

もっとも、試験中は爆睡しているのだが。

彼の机を見て、私は自分の口元が弛んだのを感じた。

どうして私はあんな馬鹿のことが好きなんだろ?

付き合いが長いから傍にいて安心する。

それから頼みごとをする時の彼は妙にかわいい。

でも私の一歩前を歩く姿はちょっと格好良い。

違うな。

好きだからそう見えるんだよね。

あれ、私ってばさっきから鈴木のことしか考えてないし。

つまりやっぱ好きなんだよね。

だから結局どこが好きなんだ?

「なーにニヤニヤしてんの」

三好が囁くようにからかう。

視線を前に向けたまま、私にだけ聞こえる声で。

私が言い返す前に三好は三好らしくない提案をした。

「今日の午後、学校抜けようぜ」

聞き付けた中村が怪訝そうな顔でこちらを見てくる。

睨んで前を向かせると同時にまた三好が喋りだした。

「どうせ鈴木が一人で暇持て余してるだろうからさ」

私は三好のこういう所は本当に昔から変わらない。

なんというか、ユーモアで動く。

唇の端を上げて賛成を示して、もう一度鈴木の机に目をやった。

浅倉がすごい勢いで私を睨んでいた。

なんで私睨まれてんの。

わからない。

けどそれは明らかに憎悪だった。