熱いシャワーを浴びながら、私は恵に帰る。

一番初めに思うことはいつも同じ。

惨めだ…。

あいつとは何度も肌を重ねたが、一度も愛なんて感じたことがない。
ただ吐き気と頭痛を伴う気持ち悪さがあるだけ。

だからケイに逃げる。


そもそもどうして大樹は私を抱くのだろう。

好きだから?
そんなわけない。

前に私が好きな人がいると言っても、あいつは興味ないと切り捨てた。
関係の改善どころか、嫉妬すらしなかった。
ただその後の行為がいつもより乱暴になっただけ。

「嫉妬してほしかったのね?可哀想に」

ケイがまた嘲笑いながら私に話かけた。
彼女の口元は動かない。
直接脳に音が響く。

「ねぇ、本当に鈴木が好きなわけ?」

気分がさらに悪くなる。

タイル張りの壁を殴りつけた。

ケイの笑い声は止まらない。


独占欲ですらない。
ただ所有していたいだけ。

あいつも、多分私も。


シャワーを止めて脱衣場に出た。

鏡に映る自分に嫌悪感。

汚らわしい。

こんなものを抱いてるから私は大樹が嫌いなんだ。


もぅ涙すら出ないくらい、
私は諦めていた。
こんな二人に未来なんてないし、下手すると過去すらない。

ただ壁を殴った手がジンジンと痛む。