ケイが現れたのは一年前くらい。

私と同じ顔の女だった。

同じ髪の長さ。

同じ服装。

刺すような冷たい視線。

顔に似合わない低音ボイス。

私以外の誰でもなかった。

だから彼女をケイと名付けた。

恵と書いて、ケイ。

『ケイ』と『めぐみ』。

ケイの存在は謎だったが、名付け方は洒落てると思っていた。

ケイはいつも傍にいる。

あの冷たい視線で睨むように私をじっと見つめている。

何もせずにじっと。

ケイは動かないし、喋らない。

ただ何もせずにじっとしているだけ。

ケイに見下ろされる私はいつも滑稽だった。

言いたいことも言えず曖昧に笑うだけ恵の顔を、ケイは見下ろす。

見下ろして、笑う。

相手の顔色を見て機嫌を取るために笑う恵とは違って。

ケイはただ、そんな恵を見て笑うのだ。

そんな恵が可笑しくて笑う。

私は恵が可笑しくて笑う。

ケイの目線から、私は恵を見下ろし、そして笑う。

それは嘲笑。

そして自嘲だった。

私は恵を脱ぎ捨てて、ケイになる。

今も。

大樹に後ろから抱き締められ、吐き気にも似た嫌悪感から逃げ出すために。

俯く恵を見下して私は笑った。