「馬鹿みてぇ」
「ひでぇ!」
曲のラストの英文をノリノリでシャウトした俺に、鈴木はぴしゃりと言い放った。
格好いいとは思わないけど、カラオケを楽しむには結局、成り切って歌うしかない。
例えそれが会ったこともない遠い誰かの歌う歌でも。
知らない感情を歌った歌でも。
次は知らない曲が入っていた。
鈴木にマイクを渡そうとすると、不思議な顔をされた。
「お前じゃねぇの?」
「違うけど」
二人で来ているわけだから俺か鈴木のどっちかが入れたんだろうけど。
まぁカラオケボックスで時たま起こる現象の一つだ。
ただの操作ミスなんだろうけど。
「聞いとく?」
イントロのギターの旋律に聞き覚えがあった。
懐かしいわけではなく。
頻繁に聞いている気もするが思い出せない。
「なんで。消すよ」
ゆっくりと音量が下がっていって、最後には聞こえなくなった。
画面も変わる。
なんの曲だろう。
鈴木がマイクを持つ。
出だしから順調だ。
絞り出すように吐き出すように、でも優しく包み込むように、鈴木は歌い上げる。
嫌いじゃないけど。
鈴木は歌いながら笑わない。
眼だけが真剣に文字を追い、喉は機械的に動く。
にもかかわらず、こいつの歌は心地好い。
なんなんだろう。
なんなんだろうな、本当に。


