ダンスホールに赤い大輪の花が見えた。





「レッドムーン…。踊って頂けますか?」





顔を隠しながら軽く受け流す。
クイーン候補。
赤い月の王冠を戴く異名を持つ。





彼女が愛するものはロベルトのみ。





彼女が許す唯一の友…。バンパイアはブルームーン。





反射の力を持ちながら、赤い月が餌食とするのは…。若いバンパイア。





「アンばっかりずるいですわ…。」





城に束縛されるクイーン候補。一人いないだけで大騒ぎ。





だから私が待っててあげる。ましな匂いのバンパイアに微笑み。





誘いを受ける。





赤い宝冠を戴く彼女はダンスホールに大輪のごとく咲き誇る。





彼女は異名があるバンパイア。





ダンスホールは畏怖と華やかさに包まれる。





吸われたバンパイアの能力を吸い込んでしまうのだから…。






美しく誇り高いクイーン候補。






ゴクリ…。





血が滴る。





「レッドムーン…。」





バンパイアを酔わすバンパイア。





「ご馳走様。まあまあね…。クスクスクスクス…。」





彼女の暇つぶしは終わらない。





誰もがその酔いに翻弄される。
死と常に隣り合わせの快楽に微睡んでいく。





今夜の魔界の月は気のせいか仄かに赤いよう。





赤い月は何を意味するのか。





クイーン候補、レディ·ポルシェ。





本当の顔を隠しながらダンスホールで戯れる。





心はいつもここにない。




策士の彼女が許すのは灰の執事のみ。





ダンスホールに集まるバンパイアは彼女にとってはただのアフタヌーンティー…。





クスクスクスクス…。





赤い月は戯れる。





愛しい灰の執事と青い月を待ちわび踊る。





影から覗く人影に気がつかないふりをしながら踊り回る。





まぁ…。なんてわかりやすい。暴君の香り…。
それに殺気てやつですの?





クスクスクスクス…。





戯れる赤い月を見る暴君は忌々しそうに去っていく。





ブルームーンが城から忽然と消えた…。
だから余計に不機嫌極まりない。





わかりやすい方ですこと…。
ロベルトがいたら何したかわかりませんわね。






回り回る赤い月…。