渇きは急速に戻って来た。
何故ここまで…。儀式の前に来てしまったから?。それとも…。この子?





猛烈にこの子…。慎二が欲しい。全てが欲しい。





渇きは癒えない。一旦押し留めたものが内側から込み上げる。






このままじゃ、次は命まで吸い上げてしまう。






この香りは…。もう止めるには難しいくらい魅力的。






彼の全てをものにしたい!私のものに…。全てを…。






どんどん内側から込み上げる渇望。






恐らく私の瞳は濃いくらいのビロードに…。






あぁ…。彼が欲しい。






あぁ…。この赤い雫は魅力的。






なのに、






「行くな!アン!俺の側にいろ。」






死なせない。






思いに反して渇望は…。何処かで聞いたセリフ。





笑い声…。この子は誰?





渇望と葛藤に苛まれながら別の気配を感知する。





校舎屋上に人影…。
唇をかんだ…。またか…。






「ブルームーン探しましたよ…。さぁ戻りましょう。」
緋色の瞳は笑う。






「貴方でしたかバルザック様…。」






炎が指先に踊る。






「私には効きませんよ。何故…。!」






火玉が横にすり抜ける。





私は…加速する。






「慎二!」






火を避けて走り込む。手を取り逃げるも炎で囲まれた。






「くっ…。また私を怒らせたいの。」






死の群青…。広がる深い深い青。全てを飲み込むビロード。






力を使えば渇望は高まる。
あぁ彼が欲しい。
食べたい、全てを私のものにしたい。






紅い炎はビロードの闇に包まれ消える。






「バルザック様…。このまま手を引いて頂けないでしょうか?」