例えば、俺の部屋の隅だったり朝方の公園だったりで、何時も彼女は泣いている。
今は通学路の途中にある、名前も知らない人の家の屋根の上だ。

彼女はどうやら俺にしか見えないようだ。
だって、あんなに悲しそうに泣いているのに、誰も彼女を見ていないから。
きっと、彼女は俗に云う『幽霊』という存在なのだろうと思う。
俺が彼女に気付いたのは、今から五年前の夏休み。
俺は小学校三年生で、丁度花火大会から帰る時だった。
彼女がいつからこの街に居るのか知らないが、俺が見る限り、彼女は何時もこの街を彷徨いている。
そして、やはり何時見ても彼女は、声も上げずに泣いているのだ。

最初こそぎょっとしたが、今では彼女をさり気なく観察する事が、俺の日課になっていた。