指輪と彼女と幸せの空

「泣かなくていいって。どんなときも俺が傍にいるから、もう泣かなくていいって。」


語りかけるような、優しい声だった。


それは、お兄ちゃんのあの包み込むような優しい温もりによく似ていた。


「変わらないんです。」


「え…」


「変わらないんです。


かーくんが亡くなったって聞いて、私、いっぱい泣きました。寂しくて、悲しくて、辛くて。もう生きていけないって、本気で思った。けど、そんな悲しみから救ってくれたのは、やっぱりかーくんだった。」


彼女は穏やかな顔をしていた。


それはこんな悲しい場にはやはり不釣り合いで、けれどとても眩して。


私が思わず目を細めて見つめていると、その優しい声は語りはじめた。


2年前、お母さんを亡くして悲しみにくれていた彼女に、お兄ちゃんが言ったという言葉を。