その人は、悲しみに暮れる集団の中では異質だった。 綺麗に伸びた黒髪の中の目は、真っすぐに額の中で穏やかに微笑むお兄ちゃんを見つめていた。 その瞳には、悲しみなど見えない。 淡々とお焼香をすませると、背をむけ、一度も振り返ることなく会場を出ていった。 それは、お兄ちゃんの大切な人。