―――いったい、誰がサリアの特別な才能を開花させたのだろうか。



 天井を睨みつけるように見つめながら、ゼフロスは頭を悩ませていた。



「………イネルギースか? それとも、クルーシー? ………ハーティレットは法術専攻に行ったから違うんだろうが……」



 唸る傍ら、正直面倒くさいことになったものだとゼフロスは思う。



 サリアが、一人前の魔法使いとしての経験を詰めるようになったのは喜ばしいことだが、副校長やその取り巻きたちのサリアに対する舐めるような視線を目撃してしまった今となっては純粋に喜べないのが本音である。



 今はリアンの采配でなんとか出張しなければならない用事を片っ端から後回しにしているが、それを続けるわけにもいかない。



 さて、どうするか―――。



 そんなとき、扉をノックする音が聞こえて、ゼフロスは顔を上げた。



「入っていいぞ」



「―――失礼しますよ、我が主。……お客様です」



 入ってきたリアンに続き、現れた長身の男に、ゼフロスは視線を向ける。



「―――――どうだった?」



 短い問いに、答えるのは涼やかで柔らかな口調でありながらも、テノール程度の低い声―――。