いつから。――― 一緒に過ごしているうちに?


「―――違う」


 きっと、出会いから。魔法使いとして未熟ゆえに動物のようにしか振舞えぬ使い魔であっても、大切にしている彼女を知ったそのときから。


 たったひとつしかない命を、尊いと言葉にせずとも態度で示した彼女を見た、あの瞬間から。


 ―――――きっと、恋に落ちていた。


「………気づくのが、遅すぎる、な……」


 苦笑を零し、アルジスは天井を仰ぐ。


「…………分かっているから…」


 自身の周りに吹き荒れる血風も、向けられる敵意と刃も、何もかも理解しているから。


「……此処にいると、勘づかれる頃までは…」


 どうか、此処にいたい。


 凍りついていた心を、そっと温めてくれた彼女の笑顔を、声を、仕草を、言葉を。



 ―――後もう少しだけ、聴いていたい。見ていたい。………感じていたい。


 そう―――ただ願う。