瞳の中に燃え上がった怒りが、フィニアを焼き尽くすかのように強く射抜く。


「落ちぶれた奴が、偉そうなこと言ってるんじゃねぇよ……!」


「………落ちぶれた、奴……ね」


 一年に三度ある昇格試験を、一度しか受けない自分がそう言われていることは知っていた。一年かけてようやく試験に挑める程度に勉強しなければ学年を上がれない女だと。


 それが波紋のように広がって、今ではおそらく“落ちぶれた女”としか今では知られていないとも思う。それを否定するのも馬鹿馬鹿しく、平然とした顔で噂に耳を貸さないできたものだが。


「学年が上だからって先輩面しやがって……てめぇなんか、八つ裂きにしてやる!」


 興奮する生徒のひとりが、媒介を操ってこちらに魔力の塊をぶつけてくる。それをむしろ冷静に見つめながら、これを受ければ彼らの怒りも少しは収束するだろうかという思いが、避けようとする思考を鈍らせた。


 立ち尽くすフィニアに、生徒たちが自分たちの怒りを払拭できると考えた矢先、フィニアの背後から飛び出してきた影が、フィニアを左手で無造作に抱きかかえると同時、右手に持った黒槍で魔法を受け止める。


「なっ……!」


 唖然とする生徒たちが相殺された魔力が生み出した爆風で鼻先すらも見えなくなった向こうをじっと見据えて、煙が晴れたその先にいた青年に息を呑む。


「……ウィンルーフ……!」


 怨嗟が籠ったような声―――その名が誰のものかなど、既にフィニアは知っている。