「大体四年間も魔法使いの出来損ないだった奴が、一晩で魔法使えるようになるなんてありえねぇっつの」


「だよなぁ。どうせ誰かに内緒で援護してもらったんだろうぜ。出来損ないでも容姿はいいからな、そこらへんの奴に頼めば多少の取引はあるだろうけど一発じゃんか」


 聞き耳を立てているフィニアの眉間の皺が多くなっていることなど知りもせず、好き勝手にサリアを貶す生徒たちは、ついにフィニアの怒りの琴線を断ち切る一言を哀れにも口にしてしまった。


「二度と魔法使いって言えないようにしてやろうぜ」


「あぁ、空き部屋にでも引き摺り込めば一発か」


 ―――ぷつりと途絶えた何かが、フィニアを動かす。懐から空色の輝石が先端についた杖を取り出すと、彼女は静かに詠唱を始めた。


「―――大気よ、風となり……彼の者たちに制裁を下せ」


 弾けた魔力が、突風を産み廊下に屯っていた愚かな者たちに襲いかかる。驚愕の声が悲鳴となり、次々と床に伏せていく生徒たちの上で突風が消え失せると、彼らは起き上がって顔を上げ、そこに佇んでいたフィニアを睨みつけた。


「何しやがる……!」


「……私の友人の才能を妬んで陰でこそこそとありもしないことを仄めかしている人たちに、遠慮する気なんて欠片もないの」


 淡々と発言するフィニアの言葉に顔を赤くし、彼らはよろりと立ち上がる。