校長室を出て、深く息をついたサリアの許へ駆けつけたのは、見慣れた友人たちだった。


「サリア、ようやく魔法が使えるようになったって聞いたんだ。おめでとう」


「ありがとう。フェイト」


 ふわりと笑った同じ目線の少年―――フェイト=メイデアムは、やわらかな茶色の髪をふわふわと走るたびに揺らして一早くたどり着き、祝いの一言を手向けてくれる。


 年齢にしてサリアの一つ下の14歳だというのに、入学早々のセカンド昇格試験に合格した後もサリアを何かと気にかけてくれる、心優しい少年だ。他の生徒たちがサリアを中傷する中、むしろかばい続けてくれたことも、記憶にしっかりと残っている。


「……けれど、どうして呼ばれたの? 魔法を使えるようになっただけなのに」



 首を傾げてそう訪ねたのは、セカンド昇格こそしたものの、法術の方に魅力を感じたらしく、ゆくゆくは聖職者になることを志すエミス=ハーティレットだ。聖職者見習(アコライト)としての衣装を着こなす彼女に、サリアはふわりと微笑む。


「私の魔法使いとしての魔法の使い方が、人とは違ったものだったから。例に見ない事態に驚いたみたいなの」


「………それだけで? 教師とはいえ、人間だから思いも寄らない事態を見ることは当たり前でしょう?」


 サリアの説明に眉を潜めたのは、前回の試験で見事にフォースへと昇格したサリアの同期―――フィニア=イネルギースである。肩を過ぎたあたりまで伸びた黒髪に癖はなく、いつも惚れ惚れして眺めてしまう。