「……ふざけるな……っ」


 青年が、ぎりぎりと歯軋りを立てる。


「神器が、お前のようなまがい物を…失敗作を、真の持ち主に選ぶなど、許さん……っ」


 放て、と男に怒号を飛ばし、その男の手にある魔力は放たれる。しかし。


 少年に届くどころか、放つと同時に彼らの傍で爆発した魔力の威力は凄まじく、男と青年は吹き飛ばされる。


「………何故だ…」


 青年が、よろりと立ち上がって、未だに光り続ける神剣に言い放つ。


「私はそいつみたいなまがい物でない! 何故そいつを選ぶ? 何故私を選ばない? 私は、幼い頃からその存在そのものを愛していたというのに!」


 返答は無い。


 ただ、青年の胸に空虚な思いが膨らむ。


「私は……っ」


 愛していた。


 生まれてから何年過ぎた今も、いつかは神器が認めてくれると自分を宥めながら、少しずつ王らしくあろうとしたのに。


「何故私を、愛しては、認めてはくれないのだっ!」


 嘆きに、漸く涼やかな返答があった。


 ―――お前に俺を使わせたくはない。……それだけのことだ。


 え、という疑問符のついた声が、青年の口から漏れる直前、神器の姿は少年とともに消えた―――…。