暗闇に紛れ、静けさに埋もれる中で彼は目を開いた。視界を覆う黒一色だけが、彼が見慣れたものだった。―――それ以外に覚えのあるものはさしてなく、彼はある意味さびしい人生を送っているのかもしれなかった。


 だが、それでも彼は長くこの闇の中で暮らし続けた。自分とは全く別種の者たちに崇められながら、尚表に出ることなく、ただ静かに闇に抱かれて眠り、穏やかな時を過ごしていた。


 しかし、ようやく彼は見つけた。興味本位で表に顔を出したとき、偶然にも見つけたのだ。


―――面白い。


 それを見つけたときは、ただそう思った。そして、それが自分のものであるという印をつけた。


 それから十余年が経つ。闇にまぎれて息を潜めながら、ずっとそれを見続けてきた。


 ―――早く、来い。


 奮い立つ胸を躍らせながら、彼は静かに笑みを浮かべた―――…。




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