久しぶりに来た学校の門前には、桜が舞っていた。
 しかし、今はそんな物を観賞している暇はない。
 朝の会の始まるチャイムが、既に鳴っているのだ。
 五年生一学期の初日からの遅刻は、さすがに拙い。
 担任の先生の高感度は左右されるし、何しろ皆が席に着いている教室にドアを開けて入るのだ。
 注目される事は間違いないだろう。
 思いっ切り走ったせいか、息切れが激しい。
「麗太君、ちょっと、待ってよ! 足、速いよ!」
 その場に立ち止まって膝に手を着く。
 先にいる麗太君は立ち止まり、私の側に駆け寄った。
 胸を押さえて呼吸を整える私に、手が差し伸べられる。
「ありがとう」
 差し伸べられた彼の手を取る。
 麗太君は私に笑い掛け、昇降口まで歩きながら手を引いてくれた。
 もう完全に遅刻だというのに、焦る様子もなく。

 昇降口のガラス張りのドアには、新クラスの生徒表が貼られていた。
 この学校は市内で最も小さく、クラスは二つしかない。
 しかも一クラスにつき、生徒は二十余人程しかいなののだ。