これが麗太君の言い分だった。
「でも、こんなの……麗太君が殺した事になんてならないよ。こんなの、ただの事故だよ」
『本当は僕が死ぬ筈だった』
「駄目だよ……そんな事言っちゃ……」
『本当は僕が死んだ方が良かったんだ』
 泣きながらメモ用紙に、苦悩の言葉を書きならべる。
「やめて……」
 静止する様に言っても、麗太君は聞かずに書き続ける。
『死ぬのは僕で良かった。僕が死ねば良かった。こんな事になるのなら』
 麗太君は新しいメモ用紙のページを捲り、その続きを書いた。
『生まれて来なければ良かったんだ』
「やめて!」
 気付いた時、私は彼の頬を強く叩いていた。
「そんな事言わないで! 麗太君のママは、麗太君を守る為に犠牲になったんだよ! それなのに、生まれて来なければ良かったなんて……言わないでよ! 麗太君のママは、そんな事望んでないよ!」
 麗太君は唖然としている。
 私が手をあげるなんて、思ってもみなかったのだろう。
「……ごめん」
 怒鳴って手をあげた次には、謝っていた。
 男の子の頬を叩いたのなんて、始めてだ。
 でも、きっとクラスメイトの麻美ちゃんなら容赦しないんだろうなぁ……。
 ボールをぶつけて来た男子をビンタで泣かせちゃう様な子だし。
『ごめん。もう言わない』
「うん。自分の事を悪く言っちゃ駄目。前にも言ったでしょ? 私達は、家族なんだって」
 麗太君は頷いて涙を拭う。
 辛い事が重なったからなんだろうけど、麗太君って意外と涙脆い。
 震える手で、再びメモ用紙に何かを書く。
『公園の話、もっと聞きたい。皆で行きたい』
 麗太君は、堪え切れない涙を目蓋に残しながらも、私に笑い掛けた。

   =^_^=

 朝の目覚ましの音が部屋に響く。
 重い目蓋で時計を見ると、どうやら二、三度の目覚ましが鳴った後の様だ。
 私は跳び起きて箪笥をあさり、今日の分の洋服を取り出す。