麗らかな春の日溜りのような温もりに促されるように、ふと彼女は目を覚ます。柔らかな羽毛の布団から這い出でて、うーんと背伸びをしたのち、彼女はせかせかと動き出した。

机の上に置かれた空の籠を引っつかみ、台所にある食材を確認した後、彼女は懐から取り出した紙に小さく何かを書き連ね、満足顔でその場から離れ、玄関の方へ赴く。

しかし思い出したように振り返り、ふわりと柔らかに彼女は微笑んだ。

「行ってきます」

返答が帰ってくることはない。それでも、彼女は笑いながら扉を開け、外へと足を踏み出した―――…。



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