「………別に。」

俺が冷たいせいか、さくらにさっきまでの勢いがない。

「ふうん………?」

なら何で来たんだ?

いつもみたいに寛ぐわけでもないし、無理を言い出すわけでもない。

やっぱり何か変だ。


「さくら、お前…ホントにどうしたんだ?」

そう言って、さくらを見ながら頭をぽんぽんと撫でる。
それは、昔から素直になれないさくらを、素直にする為のおまじないだった。


しばらくの沈黙した後、観念したように、さくらは小さな声で話し始めた。

「あの娘…。」

「…?どの子?」

「あの、暁と花火に来てた娘…。」

「…?花火って…沙夜の事か?」

「…………。」

さくらは頷いて、俯いたまま、また黙り込む。
しかも、今にも泣きそうに見える。
こんなに弱そうなさくら、見たことない。

「アイツがどうかしたのか?」

それを見てまた、ぽんぽん…としてやる。

…と、その瞬間。

「さ、さくら……?」

さくらはしっかり俺に抱き着いていた。