「………あの娘……彼女…?」

さくらは今にも消えそうな、泣きそうな声で呟くと、回した腕の力をギュッと強めた。

「……。」

どうしたんだ…?

とりあえず、泣いているようにも見えるさくらの背中をぽんぽんとする。

…というか、他にどうしてやったらいいか解らない。

「沙夜は彼女じゃないよ。てか、俺、彼女なんていないし。」

俺の言葉に腕の力はさらに増す。

「…………でも花火…。」

さくらはまるで駄々っ子のように、ポツンと言葉をこぼした。

「……花火くらい…友達とだって行くだろ?」

俺の言葉にさくらはフルフルと首を横に振って、また腕の力を強めた。

「暁…昔は好きな子以外と花火したり、見ないって言ってた……。」

「…………。」

…………?

…ちょっと待て……。

…いつの話をしてるんだ…?

確かにそんな話、昔はしたような気もするが……。

…というか、それは今、この状況に関係あるのか…?