8月の初旬

「ねぇなつるさん
どちらがいいと思います?」

この日志季は悩んでいた。

右手に紅に花柄の
左手に白地に蝶柄の着物を
抱えながら悩んでいた。

さらに手に持っているだけでは
たりないのか

後ろの机や椅子にもかかっていた

「お父様は紅色がお好きでしょう?
でも私はこちらのほうが
可愛いと思うの」

右左と急がしそうに
手を上げたり下げたりしながら
志季が言う。