「これは『選ばれしヒト』の意識であり私の意識でもあるので、言わせてもらいますが…

はっきり言って、私は人がいくら死のうと気にならない。

所詮、人はいつか死ぬんです。

ではなぜ人は人が死ぬのを嫌がるのか。

それは人が優しいから。悲しむから。

でも私には感情がない。
まったく残っていないんですよ。

人が死んでも。まわりから人が消えても。

私は笑えるんですよ。」



レイシアはずっと笑っている。



「その私にあなたはこれから着いて来なくてはいけない。

でも決めたんでしょう?
もう来ると決めたんでしょう?

ならば行きましょう。
暗闇を集めるだけの旅に。
進めば進むほど暗闇にはまっていく旅に。」


そしてレイシアはシギに手を差し出す。


シギはその、人間にしか見えない目の前の化け物を見つめ、手を取った。











2人が宿に戻ると、もうルシールとルウが朝食の準備をしていた。


「おはようございます。
お2人で出かけられてたんですね。」


ルシールがそう言うと、レイシアはにっこりと微笑んで答える。


「はい。良い天気でしたので。」


そのレイシアにルウがかけより、手を引いてテーブルへと連れていく。


それを見ていると、

「おはようございます、シギさん。」

とルシールが言う。


それにシギはルシールを見て微笑み、

「おはよう、ルシール。」

と言う。



テーブルにつき、運ばれてくる朝食を4人で食べる。


「姉さんたちは今日も出かけるでしょ?」

そう聞くルウに、シギはパンを食べながらうなずく。


それにルウはにっこり笑い、

「楽しんできてね!」

と言う。


シギはそれに微笑み、

「ありがとうございます。」

と言う。

ルシールはというと、顔を赤らめうつむき、ぎこちない動きで朝食を片付けている。


レイシアはそれを、だれよりも優しい顔で微笑んで見ていた。