『若恋』玲央の初恋【完】


「中学も一緒でした。クラスは違ったけど」



知らないな。
こういう娘がいたか、記憶の底を探すけど見当たらない。



「前は眼鏡掛けておさげ髪でした。今は髪をポニーテールにしてコンタクトにしました」



なぜか頬を赤くして俺に一生懸命に説明する。



「覚えてませんか?」

「…いや」

「同じ学年なんですけど」

「…さあ?」



俺はひとを覚えるのが苦手だ。
彼女のことはまるで覚えていない。



「―――そうですか」



明らかに落胆した彼女。

でも覚えていないものは覚えていない。

玉木が脇腹を肘で突いたけど俺は嘘は言わない。



「悪い、わからねぇ」



「そうです、よね、」


彼女は俺のブレザーをギュッと握りしめた。