きっとそれは、消えかけの、胸元にあるキスマークが痛んだから。

歩斗が出張の前日の夜に付けたモノだ。



「いきなり過ぎますよね;;
でも、30になって初めて一目惚れを信じました」



「……そう、なんですか」



返す言葉が見当たらない。

“彼氏が居る”と言うのは簡単な事なのに。

作り笑いをし、話を逸らす事しか出来ない自分が弱虫にしか。

情けないとしか、思えなかった。

カルボナーラの味がしない。



「葛西さん…また、会って頂けますか?」



「また、お店には伺いますよ?」



「違います。1人の男と女としてです。考えといて下さい」



「連絡しますから」と、私の名刺を掲げた木賀さん。