大木さんに後を任せた歩斗はハサミをしまった。



「カッコいい…」



小声でそう漏らす私に、「悪趣味」と、後ろから聞こえる。

…またかよ。

もう蹴飛ばしたい。

近寄らないで欲しい。



「帰りませんか?」



長居はしない方が良い。

ファイルを鞄に入れ、歩斗を見た。



「あぁ。――そうだ、久保ークボーさん。人の女に出す前に、自分の奥さんに構ったらどうだ?」



仕事モードの歩斗と、プライベートの歩斗がミックスされてる。

我を見失ってるような感じ。

中町は歩斗から目を逸らした。

私たちは気にせず、他のスタッフに挨拶をして店を出た。