「わかりました」と返事をし、カウンターからスタッフたちを1人1人をじっくりチェックして行く。



「先輩、あの人」



私はあるスタッフを指差した。

お客さんの表情は納得がいかなさそうなのに、本人だけが満足してる。

歩斗がお客さんに声を掛けに行けば、「左右の長さが違う気がする」と言う。

鏡を覗けば、確かに左の方が長く見えた。



「3年目…」



美容師になって、長くも短くもない。

ちょっと、気が緩んでるんじゃないかと思った。



「大変、申し訳ありません。
お時間がありましたら、僕が手直しさせて頂きます」



「お願いします」



お客さんが頷いた為、歩斗は鞄からマイハサミを出した。