ーーコンコンッ

ノック音がし、父親が「お母さんかな」と立ち上がった。

けど、父親は部屋を出た。



「どうしたんですか…」



代わりに入って来たのは歩斗。

私はテーブルを片付け、正面にある座布団に座らせた。

靴下やニット帽の入った蔓の籠をテーブルから下ろし、デザインの参考にしてる雑誌で隠した。



「何から、話せば良いのかわかんねぇけど…ひまは、妊娠してるのか?」



「何で…それを…」



私の手から、パウダー用の小筆が抜け落ちた。



「さっき、アザミさんがキレて。その時に」



何に母親がキレたのかはわからない。

けど、まさかこんなに早く伝わるなんて。