真新しい制服に袖をとおした自分の姿を、部屋におかれた鏡に写してまじまじと見つめる。


・・・・・・変。不恰好。服に着られてる、って感じ。



この春、私、岡村加奈は晴れて文月高校の一年生になった。
私の通学路には桜並木があるのに、もうほとんど散ってしまって、あまり感動は芽生えてこない。少女漫画とかだったら、こういうところで出会いの1つや2つあると思うけど、私は生まれて15年そんな場面に一度たりとも出くわしたことなんてない。


「今さら期待しても、ねぇ・・・・・・」


呟いた独り言は、誰の耳にも入ることはなく、ただただ散っている桜の花びらと一緒に、どこかに行ってしまった。




これは、本当に普通の高校生が、ただ恋愛をするだけの話。
淡くて脆いそんな話。