森に囲まれた辺境の村。
神話で語り継がれた『光の金龍・ナーガ』が封印した、『魔神ベルゼビュート』が眠っているという神殿のある村。
ベルゼビュートが目覚めないよう、ナーガの神子がその地にいた。



「マコトー? マコトどこ〜?」



村に響く綺麗な鈴のような声、その声が呼ぶのは、彼女の幼馴染みの名。



「どこに言ったのかな?」

「神子様。またマコトを探しているのですか?」



キョロキョロと辺りを見ていると、一人の老婆が話し掛けて来た。
神子と呼ばれた少女は、老婆を見て優しく微笑む。



「そうなんです。本当に、いっつも何も言わずにどこかへ行ってしまって……。お婆さん、見ませんでしたか?」



呆れたように言って、苦笑する。



「さぁねぇ。また、神殿の方にでも行っているのではないですか?」

「ああ! そっか!! マコト、あそこが好きだからなぁ。ありがとう」



少女は老婆にお礼を言うと、走って村の外へ出ていった。



「神子は、本当にお綺麗になられた」

「えぇ、神話に出てくるナーガ様そのものね」

「ナーガ様の生まれ変わりじゃ」



その後ろ姿を見ながら、村人は話していた。
少女は、金のゆるくウェーブのかかった髪を腰まで伸ばし、空のような蒼い大きな眼。
見る者、全てが溜め息をつくであろうほど美しかった。
そんな少女が『光の金龍の神子』であり、神話で語られる『金龍の姿に変わった少女』そっくりであることから、村人達は『少女は金龍の生まれ変わりだ』と、噂していた。